産婦人科医療--明日への展開 病態生理の新しい理解
Ⅰ.婦人科篇
更年期障害(更年期不定愁訴症候群)
安部 徹良
1
Tetsuro Abe
1
1東北大学医学部産科婦人科学教室
pp.813-818
発行日 1983年11月10日
Published Date 1983/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206901
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更年期障害の類似の用語として更年期不定愁訴症候群やclimacteric syndromeの日本語訳である更年期症候群などがあるが,このうち更年期不定愁訴症候群は,これまでの多くの研究者の定義1〜4)からみて,「更年期婦人における自律神経の機能障害に起因すると推定されるが,その原因として器質的変化が全く,あるいはごく僅かしか見出されない原因不明の愁訴の集合体である」と考えてよさそうである。一方,更年期障害は,研究者4)によっては,また,更年期症候群は,その定義5)の中に,更年期不定愁訴症候群の内容以外に,器質的な変化を伴うものも含めている。したがって,ここでは,できるだけ対象とする病態の多様性を少なくするために,狭義の更年期障害の意味で,更年期不定愁訴症候群を用いることにする。
次に,本症候群の病態生理に関して述べる前に,臨床医学における病態生理学について触れてみたい。臨床医学が,現実の系統的認識である学(Science,die Wissens—chaft)として体系づけられる過程において,その対象に関する認識は次のような段階を経る6)といわれている。すなわち,まず,最初は現象論としての症候論の形をとるが,次の段階では実体論としての病態生理学へ,最終段階では本質論としての病因論へと深化する方向を辿るという。したがって,更年期不定愁訴症候群の病態生理を考える場合には,その対象の認識の過程がどのように深化してきたのかを,研究の発展の跡を辿って明らかにしておく必要があると思われる。
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