産婦人科医療--明日への展開 超未熟児保育
新生児の深部体温モニタリング
中野 仁雄
1
,
久保田 史郎
1
Hitoo Nakano
1
,
Shiro Kubota
1
1九州大学医学部婦人科産科学教室
pp.555-558
発行日 1983年8月10日
Published Date 1983/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206847
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体温の測定は生体モニタリングに欠かせない。事実,バイタルサインとして,臨床の場でも昔から用いられてきた。
細胞が生命を営むとき,温度環境はその効率のよしあしに影響するものとして重要な役割を担っている。恒温動物においては,自ら熱を産成し,あるいは放散して至適環境を保っているが,外界と密に関連を有しながらも各個体独自に系の自立性を獲得する過程は個体発生の歩みでもある。すなわち,完全に母体の環境に依って生命を営み始めるであろう受精卵が,その後の形態と機能両面での分化と成熟をへて自立性を発揮するに足る制御能力を身につけたのち胎外での生活を開始するのであるが,この時期に児が経験する温度環壊の激変はその後の生活に照らしても著しいものがある。たとえば,およそ30分のあいだに,37.5℃(分娩末期腟内温度)から25℃前後の分娩室温に,ついで39-41℃の沐浴をへて26—28℃の新生児室温度におちつくという変動期を経験する。この間,中枢深部温(後述)にして1—2℃の下降がみられる。その後の6—8時間をついやして体温が回復していくが,外界に適応するために児は大きなストレスを形成するのである。正常新生児の場合にくらべ,未熟児やその他の異常児ではその影響が際立ったものであるにちがいない。新生児の適応現象の指標として体温をとりあげ,これをてがかりに緩やかな移行を促すような外部環境温度を準備することは異常児は勿論,正常新生児にとっても大切なことである。
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