年間テーマ--診断から治療へ 体温の異常
新生児の体温の異常
安達 寿夫
1
Toshio Adachi
1
1東北大学医学部産科婦人科学教室
pp.289-291
発行日 1975年4月10日
Published Date 1975/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205166
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
新生児の体温異常の限界は一般に38℃以上を発熱,35℃以下を低体温とされており,以前の参考書には発熱のほうだけ詳しく述べられており,低体温のほうは高度未熟児や皮膚硬化性浮腫症に伴い易いという程度に簡単に述べられてきた。ところが,1960年ころから新生児寒冷傷害neonatal cold injuryを一つの疾患名として症例をまとめた報告がしばしばみうけられるようになり,筆者らの経験でも予後の悪い点では発熱を認める児よりも重要であり,しかも年々発熱児が減少してきたのに対し低体温による傷害児が頻度の上でも目立つてきたように思われる。
チアノーゼ,けいれん,元気不良,哺乳力不良などがあつて東北大医学部付属病院周産母子部に救急診療を求めて来訪する新生児のなかに,結局は低体温のためだつたと考えられる例がかなりみられる。大半の産婦人科医院には保育器もあり,分娩室の保温設備もととのつてきたのにそんなことが,とも考えられるが,夜間の保温とか,出生後沐浴などの処置中の保温に対する注意など,やはり低体温に対する配慮がまだ不十分なところも少なくない。この点欧米の産科施設では新生児を裸で処置するようなところにはすべて上から赤外線ヒーターの輻射熱をあてられるようになつているところが多い。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.