特集 周産期と最先端サイエンス
新生児領域
新生児の感情のモニタリング
有光 威志
1
ARIMITSU Takeshi
1
1慶應義塾大学医学部小児科
pp.1023-1028
発行日 2022年7月10日
Published Date 2022/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000250
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はじめに
人間は生まれる前から母親の胎内で愛情や豊かな感情に育まれて成長している。このような感情は意図して生じたり与えたりするものでなく,直観的に備わっている。妊娠中の母親を含めた家族は多様な方法で直観的に胎児を育み,生まれた子どもを養育している。人類の歴史が始まってから社会様式の変化に合わせて,直観的育児が行われてきた。しかし,急速な社会構造の変化に対応するために効率的な育児を求められ,本来赤ちゃんのささやかなサインから触発される直観的育児が行われにくくなっている。このことは家族の愛着形成や児の互恵的な社会性の発達に悪影響を与えていると考えられ,現代社会の大きな課題の一つである。さらに,近年,子どもの約10人に1人が出生後に集中治療の必要となる可能性がある早産児か低出生体重児であることから,新生児集中治療室(NICU)における家族と子どもの愛情や豊かな感情に溢れたコミュニケーションの重要性が増している。このようななかで,われわれが新生児の感情や温かい心に向き合う重要性が増している。本稿では,新生児の気持ちに関する研究結果を紹介し,直観的育児や周産期医療における家族のコミュニケーションに対してサイエンスが果たす役割について考えてみたい。
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