産婦人科医療--明日への展開 Pre-Pregnancyの諸問題
遺伝的要因の取り扱い
佐藤 孝道
1
,
森田 良子
1
,
香山 文美
1
Kodo Sato
1
1東京大学医学部産婦人科教室
pp.328-335
発行日 1983年5月10日
Published Date 1983/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206801
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日本母性保護医協会は昭和47年度から外表奇形等の統計調査を行っているが,その56年度分報告によると外表奇形等の出産頻度は0.85%であったという。外表奇形の頻度が,調査項目や調査施設などによって異なることは言うまでもないが,過去同様のいくつかの報告でも1%前後とするものが多い。先天異常の発生頻度となると,外表奇形以外に出生後ある期間を経て発症あるいは発見されるものも含まれる。このうち,遺伝的要因が重要な役割を果たす疾患に罹患する率は,正確な統計的調査はないが,3〜5%程度と推定されている。
ある遺伝性疾患患者がいた時,それに関係する可能性のあるのは直接の家族(親,兄弟)だけではなく,他の近親者が関係することもある。また,身内に先天異常患者がいなくとも,近親婚や高齢出産と先天異常の関係を心配する人も少なくない。このことと,3〜5%という遺伝的要因が重要な役割を果たす疾患の頻度を考慮すると,妊婦の少なくとも10%ぐらいは遺伝的要因に関心をもち,あるいは先天異常について具体的な心配をいだいていると考えても過大評価ではない。
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