症例
Wilson病合併妊娠・分娩の1例
吉川 裕之
1
,
加藤 賢朗
1
,
多賀 理吉
1
,
桑原 慶紀
1
,
神保 利春
1
,
坂元 正一
1
Hiroyuki Yoshikawa
1
1東京大学医学部産婦人科学教室
pp.483-485
発行日 1982年6月10日
Published Date 1982/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206639
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Wilson病は,肝臓・脳基底核・近位尿細管・赤血球・角膜などに銅が沈着し,多彩な症状を呈する常染色体劣性遺伝の進行性疾患である。本症は,錐体外路系の疾患としては最も頻度が高い疾患の一つで,George1)によれば,その発生頻度は20万人に1人である。かつては発病後数年以内に肝不全や神経症状の進行により死亡することが多かったが,1956年Walsheにより,治療薬としてDペニシラミンが導入されて以来,その予後は著明に改善され,本症合併の妊娠・分娩例の報告をみるようになった。しかし,その数は世界でいまだ数十例を数えるのみである。
著者らは,肝硬変・食道静脈瘤を伴う本症妊娠例で,帝王切開術を施行し,母児ともに良好な経過を示した症例を経験したので報告する。
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