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破壊はレンズ核にかぎらず前頭,ついで側頭・後頭・頭頂の回転にも同様に認められ,銅沈着もレ以外に脳底諸核・大脳皮質に証明される。臨床的にも古典的症状の他に,分裂病・Jackson型テンカン・半身麻痺などの精神神経症状をみる。肝にはpost—necrotic型の硬変,脂肪変性,巨大星細胞,核糖原変性があるが,早期には銅は肝細胞質にビマン性に分布し,末期には核の一極にのみ集積してくる。星細胞には銅は証明されない。KynurenineまたはOH-kynを大量に排泄する症例もあり,肝性昏睡・hypersplenismを招く例もある。腎変化は著明でなく,報告者によつて所見が異なるが,銅増加,PAH・P・尿酸・アミノ酸・糖のtrans—port障害は確実である。Ca排泄亢進もみられる。眼のKayser—Fieischer環はDescemet膜の銅沈着によるが,Wilsonはこれをみていなかつた。インド銅山では大量の銅沈着をきたす鉱夫があるがWilSon病にならない。Cu64を経口的に与えると血中ではもつぱらアルブミン分屑にあつて,4〜6時間で最低値になる。以後ふたたび増加し,大部分α2グロブリン分屑にCu64が見いだされる(caeruloplasmin)。Cu64が最初の低下を示すとき肝Cu64増加,α2グCu64増加のとき,肝Cu64低下する。入つたCuの30-80%は糞に失われ,尿へでるのは1%以下である。しかるにWilson病患者は正常入の45倍ほどの量を尿に排泄する。また正常のような最初の血中Cu64低下,第2回のα2グCu64増加が本症患者でははなはだ不明瞭,かつ遅れる。Caeruloplになつてゆかないのであろう。それで本症ではCaeruloが低い。つねに分離しやすいアルブミン分屑にCuが存し,従つて諸臓器に沈着しやすい。脳ではネウロン破壊,肝には硬変,腎には尿細管機能障害を招くことになる。しかし銅が直接組織を障害する事実は確実にされていない。caerulo合成不全というだけでは,本症の腸Cu吸収亢進は説明できない。cae—ruloの濃度と本症重症度とは関係がなく,estrogen投与でcaeruloを正常域にもつて行つても症状は改善しない。caerulo合成の不全なWil—son病もあり,caerulo正常のWilson病もあるという説さえでている。遺伝的に腸粘膜の蛋白の銅吸収能が高いので,アミノ酸尿・ペプタイド尿はこの異常蛋白の代謝物であろうという説もある。本症は常染色体を介する劣性遺伝だが,caerulo合成に遣伝欠陥があるが,細織異常蛋白形成の異常があるのか,アルブミン銅からcaeruloへの転換に異常があるのか,不活性C-D caeruloを活性C-C caeruloへ変える点に異常があるのか,目下のところ明らかでない。以上の諸所見から本症の診断は困難でない。治療はCu吸収を抑制するため銅欠乏食(Cu 1日2mg以下),Carbo-resin (食後30分,2tsp)投与。Cu排泄促進にBAL (2cc筋注),Penicillamine (300mg)投与。これにはやがて反応しにくくなる。他の鉱質補償が必要であろう。
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