症例
Wilson病合併妊娠の1症例
軽部 彰宏
1
,
樋口 誠一
1
,
松浦 亨
1
,
早川 正明
1
,
大友 公一
1
,
後藤 薫
1
,
平野 秀人
1
,
真木 正博
1
,
望月 修
2
Akihiro Karube
1
,
Osamu Mochizuki
2
1秋田大学医学部産婦人科
2市立秋田総合病院産婦人科
pp.1027-1032
発行日 1990年11月10日
Published Date 1990/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900194
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銅代謝異常であるWilson病は,常染色体劣性の遺伝性疾患であり,錐体外路症状,Kayser-Fleisher角膜輪,肝硬変を3主徴とする。キレート剤であるD—ペニシラミンの長期投与により予後は改善し,それに伴い,Wilson病患者の妊娠,分娩例が報告されてきている。今回我々は小学生時にWilson病を発症し,その後D一ペニシラミンを長期服用し,妊娠,分娩に至った症例を症験した。患者は,25歳,O妊O産,両親は血族結婚で,家系内にWilson病の発症を認めた。肝硬変と続発性脾機能亢進による血小板減少および食道静脈瘤を合併したが,妊娠中にその増悪はなかった。分娩前の食道内視鏡で,食道静脈瘤破裂の危険は少ないと考えられ,経腟分娩の方針とした。妊娠39週で自然分娩し,母児ともに経過は順調であった。本論文では,症例の報告とともに若干の文献的考察を行った。
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