Modern Therapy 産婦人科と東洋医学・Ⅱ
産婦人科領域における東洋医学の現況と展望
大内 広子
1
Hiroko Ouchi
1
1東京女子医科大学産婦人科学教室
pp.325-328
発行日 1981年5月10日
Published Date 1981/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206425
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近代医学で行なわれる治療法はその効果において速効,著効が多く,その成果が認められているが,その反面,副作用が出現し,ときには医原病が発生し,問題をひきおこすことがある。とくに昨今,医療について患者やマスコミなどに針小棒大にとりあげられる傾向が多いこともあるので,安全度の高い東洋医学—中国医学—漢方治療に医師の関心がたかまっている現状である。また,昭和52年に漢方処方製剤が健康保険に採用されたため,漢方療法に興味をもつ医師はエキス剤による漢方薬の投薬ができるようになり,その応用が増加している。なお桑木によると東洋医学のなかには中国医学のほかに印度のアーユール・ヴェーダー医学や,パキスタンのアラブ伝承医学なども含まれるが,通常は東洋医学といえば中国医学をさすことが多く,また,中国医学イコール漢方といってもよい。また漢方を狭義には漢方薬を用いる治療(湯液療法という)のみをいうが,広義には針灸,按摩などを入れているという。
産婦人科領域における漢方治療については,2000年も前にかかれた古典傷塞雑病論(上巻傷塞論,下巻金匱要略)の下巻にすでに婦人の妊娠,産後,雑病の治療法が記載されているが,その応用範囲は広く,体験経験も古く,またその処方には相生,相剋作用のものが配剤されていることから,妊娠時や長期連用も可能である利点がある。また腰痛,肩こり,頭痛など不定愁訴に対する治療に漢方処方や針治療の応用など,診療範囲を拡大できるのである。
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