- 有料閲覧
- 文献概要
早産による児の未熟性が,現在における周産期死亡や罹患の最大の原因となっているが,早産の主要な原因は前期破水である。前期破水は子宮頸管不全症,羊水過多症あるいは外傷などによっても発生するが,大部分のものは原因が不明である。一般に子宮内感染は破水後細菌が子宮内に侵入するために発生すると考えられているが,最近,子宮内感染が前期破水の原因ともなるという見解を報告した論文が発表されている。
Naeye and Peters1)は在胎日数が259日未満の早産例について,分娩が開始する直前に破水した場合と,分娩開始直後に破水した場合とにおける子宮内感染の発生率を比較した。分娩開始後に子宮内感染が発生する可能性2)を除外するために,陣痛開始後8時間以内と短時間に分娩が終了したもののみを対象とした。この場合の子宮内感染とは胎盤のsubchorionic plate全体に及ぶ急性炎症所見と,羊水の強拡大下の鏡検によって,一視野に4〜5個以上の好中球が観察される場合としている。その結果,分娩開始直前に破水した場合には分娩開始直後に破水した場合に比較して,子宮内感染の発生頻度は明らかに高く,2〜3倍にも達することが判明した。また分娩前の1ヵ月間に性交が行なわれた場合には,行なわれなかった場合に比較して,子宮内感染が重症で児の死亡率も明らかに高く,さらに子宮口に裂傷が存在して,細菌の進入が容易と考えられる経産婦の方が初産婦より子宮内感染による児死亡率ははるかに高率であったという。これらのことから,経腟的に侵入した細菌によって子宮内感染が発生し,感染によって脆弱となった卵膜が破れて前期破水が発生する可能性が大きいと推定している。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.