原著
進行子宮頸癌における旁大動脈リンパ節照射の個別化と照射法
荻野 雅弘
1,2
,
高野 敦
1
,
小出 保爾
1
,
宮川 昇
1
,
村上 章
1
,
鈴木 明美
1
,
園田 稔
1
,
渡辺 千冬
1
,
植田 国昭
1
,
松田 忠義
3
,
竹川 鉦一
3
Masahiro Ogino
1,2
,
Atsushi Takano
1
,
Tadayoshi Matsuda
3
1都立駒込病院産婦人科
2現:帝京大学医学部産婦人科学教室
3都立駒込病院放射線科
pp.939-943
発行日 1980年12月10日
Published Date 1980/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206361
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子宮頸癌の治癒率向上のためには,早期発見とともに進行癌の治療が重要な課題である。今日,早期発見,早期治療により初期癌は良好な治療成績が報告されているが,放射線療法が主治療である進行癌は,高エネルギー放射線装置の普及や治療技術の急速な進歩にもかかわらず,治癒率のうえでは,この10数年著明な向上は認められてはいない。このことは遠隔転移の可能性の高い進行癌に対し,あくまでも局所療法にならざるを得ない放射線療法の限界を示唆するものかも知れない。
また,放射線治療後骨盤内再発が認められないにもかかわらず,死亡した症例のなかに,その剖検時に照射野外であった旁大動脈リンパ節(paraaortic Iymphnode以下Pa-Nと略)の腫大した転移巣に遭遇するという苦い経験がある。これはすでに放射線治療前に全骨盤腔照射野外のPa-Nへ癌が転移していた可能性のあることを示唆し,このような症例に対しては骨盤内照射だけでは不十分であり,Pa-Nに対する有効な照射で延命効果が計れるのではないかと考えられる。しかし,Pa-N転移の有無に関し,今日なお確実な情報は容易に得がたく,照射の適応や照射方法の選択などに未解決な面が多い。当科ではこのような進行子宮頸瘤症例に4年前よりPa-N照射を行なっているが,その適応の選択にあたってlym-phographyや試験開腹によるPa-Nの生検を行ない,2,3の知見を得たので報告し,さらに,進行子宮頸癌のPa-Nに対する当科の治療方針も紹介したい。
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