症例
子宮溜膿症が原因で,急性腹膜炎をおこした進行頸癌の5例
高野 敦
1
,
村上 章
1
,
小出 保爾
1
,
鈴木 明美
1
Atsushi Takano
1
1都立駒込病院婦人科
pp.715-723
発行日 1980年9月10日
Published Date 1980/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206318
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進行子宮頸癌患者や体癌患者にしばしばみられる合併症の一つに,子宮溜膿症がある。これは,子宮頸管が癌や癌壊死物質で閉塞され,子宮腔からの分泌物が貯溜し,さらに細菌感染をまねき,膿や壊死物質がたまる疾患である。症状としては,陣痛様下腹痛(Simpsonの徴候),腰痛や発熱をみるが,この段階で経腟的に頸管を探り拡大し,子宮腔へゴムドレーンなどを挿入することにより,軽快するのが普通である。しかし,腟の方へ膿が排泄されず,子宮内圧がたかまり,腹腔へ膿が破裂すると,いわゆる急性腹膜炎を惹起し,一瞬にして重篤な様相を呈する。
近時,頸癌の集団検診が普及し,上皮内癌や初期浸潤癌が多くなり,進行頸癌の合併症である子宮溜膿症はあまり注意が払われなくなり,これについての報告も少ないようであるが,一方では,高齢者の進行頸癌が多くなりつつある傾向にもある。
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