臨床メモ
妊娠は卵巣癌の予防となるか?
竹内 久彌
1
1順天堂大学医学部産婦人科学
pp.170
発行日 1979年3月10日
Published Date 1979/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206003
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英国(イングランドとウエールズ)や米国では卵巣癌による死亡率がその50年間に2倍になったという。わが国でも卵巣癌が最近増えはじめたといわれている。
ところで,女性性器疾患と妊娠・分娩とが常に無関係たり得ないことはいうまでもない。ロンドンのBeralら(Lancet1:1083,1978)は分娩数の多窩と卵巣癌による死亡率を調査して,卵巣癌の発生に妊娠が影響しているか否かを知ろうとした。つまり,英国と米国における一家族中の子供の数の年度別消長と,卵巣癌による死亡率の年度別消長とを,婦人の生年別に調査したのである。その結果,卵巣癌による死亡率はこの調査の開始年である1861年生まれの女性が最低で,その後次第に増加して1906年生まれの女性で最高に達し,以後この調査の最終年である1935年生まれまで徐々に減少している。一方,子供の数は1861年生まれの女性が平均3.3人,1906年生まれが1.9人,1935年生まれが2.3人と,卵巣癌による死亡率とちょうど逆の関係にあることがわかった。すなわち,分娩数の多いほど卵巣癌にはかかりにくいことになる(卵巣癌の治癒率はほとんど変わっていないので,死亡率は罹患率とおきかえることができる)。
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