疾患の病態と治療 再発と再燃
卵巣悪性腫瘍
吉田 吉信
1
,
岡村 均
2
Yoshinobu Yoshida
1
,
Hitoshi Okamura
2
1滋賀医科大学医学部産科学婦人科学教室
2京都大学医学部婦人科学産科学教室
pp.691-695
発行日 1977年8月10日
Published Date 1977/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205663
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.卵巣悪性腫瘍の治療とその成績
婦人科学領域における悪性腫瘍のうち,代表的な子宮頸癌,絨毛上皮腫および卵巣悪性腫瘍の三者における腫瘍進展の方式には,それぞれ大きな相違点がある。もちろん腫瘍原発病巣からの連続的な破壊的進展は三者共通して認められるが,その転移の様式に特徴があり,子宮頸癌は後腹膜の旁子宮組織を,リンパ節転移の連なりの形で骨盤壁へ進み,骨盤血管に沿うリンパ節群を犯し,漸次上行する形をとることが最も多く,絨毛上皮腫は,腫瘍細胞のtrophoblastとしての本来の特性として,血液に親和性を有し,容易に血管を破壊して局所に血腫を作る一面,血管中に侵入した腫瘍細胞は,血行性に遠く肺転移を最初に招来するものである。卵巣悪性腫瘍は,当然,リンパ行性にも血行性にも転移を生じうるが,一般的には腫瘍被膜の穿破によって,比較的早期に腹腔内播種(dissemination)をきたし,骨盤腹膜,腸間膜,大網へと,きわめて広範な転移をきたすのがその特徴である。
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.