特集 卵巣,卵管の手術--最近の焦点
卵巣悪性腫瘍の手術
細川 勉
1
,
小室 順義
1
,
田中 忠夫
1
Tsutomu Hosokawa
1
1東京慈恵会医科大学産婦人科学教室
pp.1015-1019
発行日 1971年10月10日
Published Date 1971/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204499
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はじめに
卵巣悪性腫瘍というのは,一つの"entity"ではなく,一種の総括名の表現である。この中には,上皮性の悪性腫瘍もあれば結合織性のそれもあり,また特殊の悪性腫瘍も含まれている。時にはこの中にKrukenberg氏腫瘍のような,他臓器癌からの転移腫瘍さえ包含することがある。従つてこのほかにさらに樋口先生のいわゆる"中間群腫瘍"を加えたのでは,話は大変複雑になつてしまう。そこでここで言う卵巣悪性腫瘍というのは,FIGOが定めた表1の(c)のカテゴリーのものを中心とし,これにその他の良性腫瘍から続発した確かな癌(例えば類皮嚢胞腫由来の扁平上皮癌)や,Embryonal carcinomaなどを加えたものということにしたい。なお表1におけるFIGOの"primary"というのは転移性でないという意味であるから,この(c)の中には原発性の癌のみならず,良性嚢腫からの続発癌が含まれることは当然である。また表1において(b)をいかにみなすかとか,あるいはいわゆる"borderline case"はどうするのかなどという問題があるが,これは診断あるいは認識の問題であつて,与えられたテーマからは逸脱するものであろう。従つて例えば(b)を癌と信ずる人はそれを加えてもかまわないが,ここでは一応上記のごとき卵巣悪性腫瘍ということにし,これを単に卵巣癌と略称することから出発してゆきたい。
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