疾患の病態と治療 女性のバイオリズムとその異常
黄体のライフスパン—形態学的基盤
岡村 均
1
,
吉田 吉信
1
Hitoshi Okamura
1
,
Yoshinobu Yoshida
1
1京都大学医学部婦人科学産科学教室
pp.795-800
発行日 1977年9月10日
Published Date 1977/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205678
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月経黄体はそのprogesterone分泌機能を介して卵管の運動性に影響を与え,それによって卵の卵管内移送を調節するとともに,子宮に対しては子宮内膜の分泌期変化をもたらすというように妊卵の子宮内着床に不可欠な働きをしている。この月経黄体は受精卵の着床が成立すれば妊娠黄体へと移行し,初期妊娠(28日型周期の婦人で妊娠第6週頃まで1))の維持に必須な機能をはたし,以後その機能は低下するものの妊娠末期まで妊娠黄体として存続する。妊娠が成立しなければ月経黄体は漸次退行変性(luteolysis or luteal regression)を起こし,数週間をへて最終的には白体へと移行する。この黄体のライフスパンを形態学的見地から眺めるのが本稿の目的であるが,その前にこういった機能の変化が速やかな組織の機能面を検討するための形態学,すなわち機能形態学の手法について少しのべたい。通常,形態学といえばヘマトキシリン—エオジン染色のパラフィン切片を光学顕微鏡で検索する方法(以後光顕と略す)であるが,本法は機能の変化が大きい場合にのみ有用である。これより少し感度よく機能を検索する方法としては凍結切片に各種の特殊染色あるいは酵素染色を行ない,これらの染まり具合を光顕で観察する酵素組織化学的方法がある。さらにもっとも感度のよい方法としては組織を構成する個々の細胞を電子顕微鏡で観察するという手段がある。
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