疾患の病態と治療 転移
婦人科腫瘍の転移成立の共通性と特殊性
西谷 巌
1
,
椎名 美博
1
Iwao Nishiya
1
,
Yoshihiro Shiina
1
1北海道大学医学部産科婦人科学教室
pp.499-504
発行日 1977年6月10日
Published Date 1977/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205634
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癌の予後は浸潤の程度と転移の有無によって著しく左右されることはいうまでもない。このうち転移とくに遠隔転移を認める場合は,癌の局所療法ともいえる外科療法や放射線療法のもはや適応ではなく,さりとて完治を期待できる制癌剤もわれわれの手中にない現在,予後はまったく悲観的となる。
そこで,転移の正確な診断,検査をいかに行なうかは極めて重要なことであるが,最近の腫瘍病理学,免疫学の進歩によって,転移成立の機構を解明することはもとより,転移をいかに抑制するかというアプローチも数多く試みられている。癌転移の概念は,古く1865年,Thiersch1)によってリンパ節内に上皮性腫瘍細胞を認めたことに始まり,癌細胞が脈管を経て他部へ移送されることから,いわゆる"Cellular transport concept"として確立された。Racanierは,さらに癌細胞が静脈壁から浸潤する血行性転移を明らかとし,初めて"Metastasis"という用語を用いた。
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