論述
骨肉腫の肺転移成立時期の検討
後藤 守
1,2
,
奥泉 雅弘
3
Mamoru GOTO
1,2
1国立札幌病院
2北海道がんセンター整形外科
3北海道大学医学部整形外科学教室
pp.254-262
発行日 1969年4月25日
Published Date 1969/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904058
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はしがき
原発性骨悪性腫瘍の代表である骨肉腫については近年医家の関心が高まり,早期診断,早期治療の面で格段の進歩をとげたことは喜ばしいことであるが,一方その治療成績についてみると諸家の熱心な努力にもかかわらず甚だ思わしくない成績である.5年生存率についてみるとDahlin, D. C.らの20.3%(408例中83例,1967年)Weinfeld, M. S.らの16%(79例中13例,1962年)阿部光俊ら東大における15%(46例中7例,1965年)などの値がみられ,われわれも北海道骨腫瘍登録所に登録された19年間の骨肉腫患者129例中97例の追跡調査より5年生存率12.5%(56例中7例)を得て前に報告した(第1表).
上皮性悪性腫瘍に比べて骨肉腫の治療成績が非常に悪い原因は何であろうか.これには複雑な多くの因子が関与すると思われるが,なかでも重要な因子は骨肉腫の血行性転移,とくに肺転移の問題である.事実,大部分の患者は原発巣根治手術後6〜18ヵ月後に肺転移のため生命を失つているものが多い.したがつて肺転移成立防止,または肺転移巣の効果的な治療ということが骨肉腫の治療成績を向上させる鍵であるといえよう.
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