薬の臨床
腟トリコモナス症に対するTinidazole内服錠の臨床的検討—生鮮鏡検法,培養法およびパパニコロウ細胞染色法による
下斗米 啓介
1
,
山田 正一
1
,
沓沢 武
1
,
武山 信一
1
,
赤間 正義
2
Keisuke Shimotomai
1
,
Masayoshi Akama
2
1北海道大学医学部産婦人科学教室
2北海道対ガン協会細胞診検査室
pp.751-756
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205480
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
トリコモナス腟炎は,婦人科外来では頻度の高い疾患であり,自覚的には帯下感,掻痒感を主訴とする場合が多いとされている。しかし,これらの症状は従来指摘されているほど定形的なものでなく,当科外来でトリコモナス症と診断された37例の主訴を調べると,無症状が54.0%(20/37),掻痒感あり32.4%(12/37),掻痒感わからない13.5%(5/37),帯下感51.3%(19/37)で,本疾患の約50%近い例はむしろ無症状である。したがって妊婦検診,癌検診などで偶然に発見される場合が非常に多い。昭和49年度の北海道対ガン協会調査による一般婦人の癌検診車におけるトリコモナス虫体発見率は,受診者総数44,602名に対し,トリコモナス腟炎患者数は2,462名(5.52%)と報告されている。
また,本疾患は容易に一次的虫体消失が得られながらも,再発例が多く難治性であるといわれるゆえんは,外来通院の煩雑さ,尿路感染,配偶者の感染などによる不完全治療が大きな原因であろうといわれる。したがって,内服錠による全身投与療法はこれらの諸点を改善する意味で大きな意義があると思われる。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.