原著
単純性卵巣癌41例の臨床統計的観察—特に予後因子を中心に
伊藤 博之
1
Hiroyuki Ito
1
1聖路加国際病院産婦人科
pp.493-499
発行日 1976年6月10日
Published Date 1976/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205436
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卵巣癌は近年増加の傾向にあるという。しかも卵巣癌の罹患率は子宮癌のほぼ4分の1であるのに,その死亡率はきわめて高い。その原因は卵巣癌の場合,発見時約80%はすでに腹腔内に広く進展した状態であること,さらにまた,本腫瘍はその進行度と組織学的所見とが必ずしも一致しないことなどによる。したがつて卵巣癌の場合,早期癌という概念は他臓器の場合と同義に用いることはできない。卵巣ほど多種多様な腫瘍を発生し,きわめて幅広い組織学的性格を示す臓器は他にない。したがつて,その予後を論ずる場合,年齢,妊娠歴,臨床期別分類(Stage),腫瘍型(Tumor type),組織学的悪性度(Histlogical grading),各種治療法などの諸因子を検討しなければならない。1961年以来,本邦では卵巣腫瘍委員会が設立され,卵巣腫瘍全般にわたる詳細な検討が行なわれ,卵巣癌征服への努力が実りつつある。著者は,今回,1960年1月から1970年2月までの聖路加国際病院産婦人科(以下当院と略す)で手術のうえ,卵巣癌であつた41例につき,予後を中心に若干の検討を加えたので報告する。
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