疾患の病態と治療 妊婦管理
妊娠が母体に及ぼす影響
精神・心理
長田 宏
1
,
山本 浩
1
Hiroshi Osada
1
,
Hiroshi Yamamoto
1
1川崎市立川崎病院心療産婦人科
pp.195-197
発行日 1976年3月10日
Published Date 1976/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205381
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妊娠に際して現われる身体的症状に対する研究,検査,治療はきわめて複雑化し,多岐にわたり系統的に行なわれる。これを妊婦に対する外側からのアプローチとすれば,妊娠がどのように女性に心理的状態,反応を起こしているかを観察し,考察することは妊婦の内側に対するアプローチともいえよう。しかし妊娠というごく生理的な現象を妊婦自身がどう受けとめているかをあらためて考えてみると,一面不可解な,神秘的な事柄であることに気づく。妊婦は自分の精神的な体験をあまり話さないといわれるが,それは多くは無意識的なこととして本人は意識的には気づいていないことにも基因するのであろうか。子供殊に女児は幼いときから妊娠の幻想に満ちているともいわれるが,成人し実際に妊娠したいという欲望を抱くときも個々の女性によりさまざまな要素を内在していると考えられる。妊娠中にさまざまな感情の易変性,情動障害が起こりやすいのも妊婦の精神的経験のみならず,社会的,教育的,道徳的な人間社会の規約の中に起こる現象が妊娠であるからとも理解される。こうした妊婦の複雑な情緒,感情を理解するためには精神分析学的知見に教えられることが多い。そこで今回はこの知見をもとにして,精神力動的に妊婦の心理を考察してみたい。
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