巻頭論文
胎児診断の現況と問題点
坂元 正一
1
,
神保 利春
,
佐藤 和雄
,
桑原 慶紀
,
鈴木 孝男
Shoichi Sakamoto
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.9-25
発行日 1973年1月10日
Published Date 1973/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204765
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はじめに
現代産科学の著しい発展の跡を顧みると,そこには,3つの大きな流れを汲みとることができる。その第1は,妊娠中毒症の早期発見と治療,分娩時ショック対策の進歩,化学療法による感染症の治療など,妊産褥婦管理面における成果であつて.母体死亡の急激な減少をもたらした。第2は,胎児胎盤系の概念の導入やMEの進歩にともなう,安全分娩管理の発展であり,この成果は,周産期死亡の減少につながつた。そして,第3は,これからともいうべき胎児診断による胎児管理学の発展である。妊娠早期診断のための,HCG測定法の進歩,超音波診断は,胎児への不用意なX線被曝の危険を防ぎ,また確徴としての胎児存否の診断の大きな助けとなつている。胎児情報を羊水にもとめる,種々の検査法の進歩は,染色体分析の発展と相俟つて,先天性代謝異常や染色体異常の出生前診断という画期的成果を生み,Genetic Counselingという新しい分野を拓こうとしている。さらに,妊娠後期においては,胎児胎盤系の機能検査に加えて,超音波断層法の応用,諸種の羊水情報などをもとに,成熟度判定によるhigh risk babyの適切な娩出時期の決定が試みられている。
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