臨床メモ
糖尿病妊婦と血糖値
竹内 久弥
1
1順天堂大学産婦人科
pp.25
発行日 1973年1月10日
Published Date 1973/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204766
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糖尿病妊婦の児は巨大児になりやすく,奇形合併頻度の高いうえに,周産期死亡率も高いことが知られ,わが国でも最近では簡単に検査がおこなえるようになつたこともあつて関心がもたれつつあることはいうまでもない。
なぜ糖尿病妊婦の児に奇形が多いのか,その理出は不明であるが,周産期死亡率の高いこととともに実地臨床上妊婦の管理の点でも困ることが多い。その意味でスウェーデンのKarlssonら(Amer. J. Obstet.Gynec. 112, 213, 1972)らの報告は一つの新らしい方法を示しているように見える。彼らは1961年から70年までの179例の糖尿病妊婦から生れた180名の児について,周産期死亡,低血糖,黄疸,RDS,奇形の発生率と母体の血糖値との関係を検討した。その結果,周産期死亡率は母体血糖値が100mg/dl以下の群が3.8%であつたのに対し,100〜150mg/dl群は16%,150mg/dl以上群は24%と明らかな差が見られる。RDSおよび交換輸血を必要とする重症黄疸の発生率も血糖値100mg/dl以下とそれ以上の群では差が認められ,前者が低かつた。しかし,母体血糖値と児の低血糖発生率には関係がなく,また興味深いことには巨大児の発生率と母体血糖値との関係は見出せなかつた。
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