特集 産婦人科の治療その限界と展望
日常臨床上よくぶつかる頑症疾患の治療の限界
婦人科
エンドメトリオージス
河合 信秀
1
Nobuhide Kawai
1
1三井記念病院産婦人科
pp.1101-1103
発行日 1972年12月10日
Published Date 1972/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204729
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子宮内膜症は近年世界各国で増加しており,わが国もその例外ではないが,これは各病院において手術患者の剔出物を完全に精査することが行なわれるようになつたことによる発見率の向上の他に,最近種々の子宮内操作が増加し,明らかにそれによると思われる本症の発現が増えていることも原因していよう。本症の診断はかならずしも容易ではなく,開腹して初めてそれと気づくことも少くない。この疾患は腫瘍でもないのに,しばしば異所性侵入を示したり,また転移のように遠隔臓器にひろがつたりする性質をもつており,いいかえれば癌のような悪性的性格をもつた正常組織とでもいえよう。また正常の子宮内膜が卵巣ホルモンに反応するように,この組織も卵巣ホルモンの刺激に反応するが,実際には必ずしも常にホルモンの刺激に応ずるとは限らなく,たとえばプロゲステロンに反応する力を示さないことがしばしばみられる。一般的には子宮内膜症の生活力は,その個体のそのときの卵巣機能に依存しており,したがつて更年期になればその生活力は衰える傾向にある。
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