特集 悪性腫瘍の治療--最近の焦点
卵巣がんの治療
泉 陸一
1,2
Rikuichi Izumi
1,2
1国立霞ヶ浦病院産婦人科
2東京大学
pp.207-217
発行日 1972年3月10日
Published Date 1972/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204571
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はじめに
子宮頸癌においては,長年におたる根治手術術式の改良,後処置の改善,強力な放射線治療装置の出現などによつて現在では,ほぼその治療方式は確立されたといつても過言ではない。またかつては婦人科疾患のなかでもつとも悲惨な結果を招いた絨毛性腫瘍にたいしても,合理的な一定の管理方式にもとづいたfollow-upが行われて,絨毛上皮腫の早期発見,治療はもとよりその予防さえも期待できうる現状である。しかしながら,婦人科においてこれらの悪性腫瘍とともにきわめて重要な位置をしめる卵巣癌についてはどうであろうか。卵巣がんの5年治癒率はきわめて低く(25%),年次別の死亡数も減少どころかやや増加している事実がそのすべてを端的にしめしている。婦人科の一般臨床医が卵巣癌の症例に遭遇した場合,積極的もしくは攻撃的な治療を試みるよりはむしろ悲観論に支配されることが少なくないように思われるがそれも止むを得ないような治療成績しかえられていない。現在行なわれている治療法もしたがつて暗中模索の状態といつてよく,世界の各医療機関によりそれぞれ考え方が異りきわめて種々の方式が出されている。このような現況を理解するため,はじめに卵巣悪性腫瘍の特殊性についてふれ,ついでその治療法をできるだけ整理してのべることにする。
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