- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
子宮外妊娠とは,子宮腔以外の場所に成立した妊娠をいい,その大部分が卵管妊娠であり,定型的中絶症状としては突発的下腹痛と腹腔内出血による急性貧血症があげられることは今更述べるまでもない。 しかし多くの子宮外妊娠の経過と症状が決して単純なものではなく,処置の時期を失して死の転機をとるものから,診察,検査および慎重な経過観察によつてはじめて子宮外妊娠の疑いをもたれるものまで,正に多種多様とさえいえることも周知の事実である1,3,5)。そこで,この多様性を埋解した上で,少しでも子宮外妊娠を疑われる症例に遭遇したならば,適宜な補助診断法を行ない他疾患との鑑別にすすむ必要があり,その補助診断法として従来より内診時特殊所見(内診痛),タグラス窩穿刺,後腟腔円蓋切開,妊娠反応,子宮内膜試験掻爬,X線子宮卵管造影,腹腔鏡検査など,数多くのものがあげられているのであるが,日常必ずしもこれらの検査法を完全に駆使できるとは限らない悩みがある。それは結局,妊娠の確認法と外妊部位の確実な観察法に決め手を欠く場合があるからに他ならず,その意味でこれら検査法のうちでも最近の妊娠反応および腹腔鏡検査法の進歩は外妊診断に大きく貢献しているといえよう。
一方,最近の超音波診断法の発達により子宮内妊娠の診断が早期から確実に行なえるようになつており6,7,8),これを利用して外妊をも診断しようとする試みがなされてきている2,8,9)。われわれも昭和43年以来,超音波診断法による子宮外妊娠の診断について検討を加えてきており,すでに報告した通り補助診断法として有効に利用できるものと考えているので4),これまでの経験を簡単に紹介してみたい。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.