特集 異常妊娠とその診断
胞状奇胎の形態と組織像
渡辺 行正
1
1東京慈恵会医科大学産婦人科学教室
pp.569-572
発行日 1970年7月10日
Published Date 1970/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204235
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胞状奇胎ほど解つているようにみえて解つていないものはない。絨毛の胞状化があればそれで奇胎であるとするならば何もいうことはないが,しかしそのようなことで果して奇胎を理解することができるであろうか。
確かに図1,2に示すような,いわゆる定型的形態を示すものは間違いもなく奇胎であり,その組織像も常に定型的奇胎像を示している。図3,4,5はいずれも図1,2の組織像で,図3は小嚢胞の先端部,図4は嚢胞間の茎部にみられるトロホブラスト増殖像,図5はいわゆるトロホブラスト増殖集団である。このように形態と組織が一致しているものはその良悪性の問題は別として明確に胞状奇胎といつて差支えない。しかしいつもこのようなものばかりとは限らず,図6にみられるようなもの,あるいは図7にみられるような浸軟胎児を合併しているものもみられる。ではこのようなものの組織像は果して定型奇胎にみられるようなものがみられるかというと,それは決してそうではなく,図8,9にみられるようなトロホブラスト異常増殖像の極めて弱い組織像を示すのが常である。では更に一見したところ胞状奇胎とは思えないが,しかし正常絨毛ともいささか異なるという例をみると,図10,11にみられるような,いわゆる水腫絨毛が区分される。
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