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はじめに
従来から悪性腫瘍の治療法としては,根治療法として外科的療法と放射線療法とがとりあげられ,両者の併用療法が最も効果的であるとされているが,さらにそれら療法の適応を逸した重症例や再発転移例に対しては,現在,制癌剤による他はないが,上述した根治療法は,要するに局所療法であるから,癌が全身性疾患と考えられていることから,制癌剤の目ざましい追究があるのは,けだし当然というべきであろう。現在までに発表されてきた制癌剤は表1のごとくであるが,製剤の改良は次第に根治療法への仲間入りを果たす日も近い期待をわれわれに与えさせる感がある。さて制癌剤の使用方法についても,種々検討が加えられ,また,工夫されており,表2のごとく種々の方法が行なわれているが,一長一短のある現状である。従来からの使用法の成果としては,末期癌への応用が主体をなしていた関係もあり,自覚症状緩解程度のものが多いようであるが,それは制癌剤が本質的に腫瘍細胞のみに作用するのではなく,生体の造血臓器や他の重要臓器にも作用し,そのため副作用を発現して,その使用を中途で中止せざるを得ないことなどにも起因するものと考えられる。よつて副作用を抑制するような薬剤や,作用機序の異なつた各種制癌剤の併用などが試みられ,かなりの効果もあげられているようである。しかしいずれにせよ,制癌剤が末期癌に使用されている現状では,その治療成績も飛躍的な向上を期待するのは困難であろう。今回,われわれは高濃度のpenicillin存在下で37℃,20分間の処置を行ない,溶血性連鎖球菌(以下,溶連菌と略)の制癌能を高めたといわれる,いわゆる制癌剤"PCB−45"を子宮頸癌に使用する機会を得たので,その使用成績について報告する。
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