特集 流早産の原因と治療の問題点
流早産と心理的因子の関連
岡村 靖
1
Yasushi Okamura
1
1九州大学医学部産婦人科教室
pp.727-731
発行日 1967年9月10日
Published Date 1967/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203763
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はじめに
自然流早産の原因は数多く挙げられているが,その中で,確実に自然流早産と関連ありと考えられるものは,子宮頸管不全症,打撲,転倒などによる機械的刺激,および,梅毒である。
しかし,その他の原因については,最近,トキソプラスマ症,染色体異常,受精卵の着床部位異常,子宮の形態異常なども注目される趨勢にはあるが,現時点では,なお異論もあり,まだ明確な結論が得られていない状況にある。また,心身医学的立場から本問題を解析せんとする試みも最近欧米では活発になりつつあるが1)〜4),それらの症例を分析してみると,心的因子がどの程度,流早産に関連していたのかきわめてあいまいな症例も少なくない状態で,また,心理療法が果して有効であつたのか,自然に流早産が治癒したのか判然としない症例も多い。それは1つには,自然科学領域における構造の明らかな物質に関する研究にはmaterialistic realityがあるために,客観的評価が容易であるが,心理的問題におけるpsycholo—gical realityは数式化が容易でなく,また,無限の対応性を有しているため,心理的要因の解析,および,精神療法の効果判定に困難さがあるからでもあつて,まだ心身両面からの検索が厳密になされているとはいいがたい。
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