境界領域
婦人陰部水腫
中島 哲夫
1
1慶大外科教室
pp.353-358
発行日 1953年6月10日
Published Date 1953/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200856
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒言
婦人陰部水腫(水瘤)は女性水腫Hydrocelefemina s.muliebris,Nuck水腫HydroceleNucki,Nuck嚢胞,大陰脣水腫,女性鼠徑水腫とも呼ばれ,子宮圓靱帶水腫Hydrocele lig.Ro—tundi ut.(子宮鼠徑索水腫Hydrocele chordaeuteroingrulinalis)の主因をなしている。本水腫は男性の精系水腫に略々相當するものであるが,精系水腫に比して甚だ少い。外國ではWechsel—manが1890年に既に文献上の60例に自己の2例を追加報告しているといわれ,以後尠からざる報告例があるが,本邦に於ては,文献上では,1927年鈴木・角田の1例報告以來現在迄8報告,症例數にして14例にすぎない。勿論外國に比し本邦に於ては,その發生が少いのかも知れぬが,それでも相當數の症例が誤診や,看過されたり,或はあつても報告されていない事を日常時々聞いている。慶大外科教室にても,偶々昭和25-26年間に8例の症例を經驗した位である。從つて從來考えられていた程,本邦にても本症は稀有の疾患でなく,樣に思われ,且つは疾病の關係上,患者は外科及び婦人科を訪れるため,兩科の領域界の疾病として誠に興味深いものと考え,先ず慶大外科の症例を簡單に報告し,ついで先人の報告に基いて,本疾患についていさゝか考按を試たが,諸賢の御參考の助となれば幸甚である。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.