今月の主題 心膜疾患の臨床
二次性心膜疾患
粘液水腫
伊藤 敬
1
,
尾形 悦郎
2
Takashi ITO
1
,
Etsuro OGATA
2
1東京大学医学部・第4内科
2東京大学医学部・内科
pp.61-63
発行日 1980年1月10日
Published Date 1980/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216370
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概念
粘液水腫(myxedema)と甲状腺の関係は古くから知られ,すでに1870年代の英国ではこれに伴う全身の浮腫,腹水,胸水に関する報告がある.
心臓との関係が認められたのは1918年Zondeckがmyxedema heartとしてまとめたのが最初とされている.すなわち,①心拡大,②心音,心拍の減弱,③心拍出量の低下,④低電位などの心電図変化,⑤これらの所見は甲状腺製剤の投与にて改善すること,などである,心血管系の変化は,甲状腺機能低下症が持続,進行し,myxedemaが出現した時点でのみ顕在化するとされ,典型的な症例の診断はmyxedemaとしての特徴ある理学的所見だけで可能であり,表に示される甲状腺機能低下症に伴う一般症状と心疾患の関連を考慮することが大切である.長年他の疾患として見過ごされている場合や,この疾患の特徴として患者本人の訴えが少ないことなどがあり,医師側の責任も大きい.このものの頻度としては,成人では40〜50歳以後の女性に多い.これは症状の顕在化するまでの時間が長いこと(6年以上との報告もある),機能低下症の原因に慢性甲状腺炎がこの年代の女性に多いことも一つの理由であろう.
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