原著
擦過塗抹標本に現われる子宮頸管粘膜圓柱上皮細胞について
和田 一男
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科教室
pp.322-325
発行日 1953年6月10日
Published Date 1953/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200845
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1943年G.N.Papanicolaou & Trautが腟内塗抹標本法による子宮癌の診斷を發表して以來,各方面に於ける塗抹標本法の研究は,盛に追試検討され,特に現在産婦人科領域に於ては日常缺くべからざる診斷法となり,吾々も之に依つて臨床的癌診斷上に多大の成績をあげつゝある。尚お慶應義塾大學醫學部産婦人科教室に於ては,安藤教授御指導の下に改良された擦過器を用い,(慶應式擦過器)扁平圓柱結合部から,擦過塗抹標本を作成し,Ayreの擦過器に依るよりも更に大なる效果をあげている。
元來塗抹標本法は,子宮頸管粘膜圓柱上皮細胞が混入する頻度が多く,此の細胞は屡々大きさ,大小不同,染色性,核の活動状態,核と原形質との割合等に於て惡性細胞に相當類似した形態を示し,その判定上僞陽性になる事も少くない。從つて私は特に此の點に留意して塗抹標本判定に當つているが,今迄の所,悪性細胞と子宮頸管圓柱上皮細胞との明確な判定基準に關して言及した報告を見ないので,500枚の子宮頸管粘膜擦過塗抹標本を作成し,その細胞の特徴につき検討を試みた。
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