原著
菌核菌(Sclerotonia Libertiana)抽出液の子宮作用に關する研究・1
糸永 健次郞
1
1九州大學醫學部産婦人科學教室
pp.13-17
発行日 1951年1月10日
Published Date 1951/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200426
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緒論
菌核菌Sclerotinia Libertianaは麥角と同様,眞子嚢菌Euascomycetesに屬する菌種であり,菜種,大豆,人參,大根,馬鈴薯等160餘種の植物に寄生し菌核病を起す。菜種菌核病は,わがくにでは至る所に發生するが,殊に九州地方では平均こ割餘りの被害を起し,菜種の最も恐ろしい病害と見なされている。菌核菌の菌核中に子宮收縮物質が存在する事は,1929年Sokolov,S1)によつて報告された。即ち菌核菌エキスは,ウサギ耳殻血管,カエル下肢血管を擴張し,モルモツト摘出子宮に對して強直性收縮を起し,ウサギ,ネコの摘出腸管に對しては弛緩的に作用し,温血動物の静脈注射に際し血壓は下降し,呼吸は促進され,心運動は抑制されると述べている。わがくににては,1948年,里村2)か該菌を人工的に培養し,子宮收縮物質を抽出した。其の有効成分に關しては,里村,徳富3)の研究によれば,アルカロイド反應陽性麥角アルカロイド反應陽性であるが,鷄冠反應陰性,アドレナリンとの拮抗を認められない點から,麥角アルカロイド,エルゴクミン,エルゴトキシンとは異る物質と考へられている。本實驗に使用した菌核菌抽出液は,菌核菌の菌絲を脱脂糠を原料とした培養基に麹式に培養し,アルコールエキスを作り,鹽酸酸性のもとに五分の一に減壓濃縮し,蛋白等の夾雜物を除去し,中和した液である。
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