症例
術前に診断し,卵巣を温存し得た広汎性卵巣浮腫の1例
久松 洋司
1
,
上田 匡
1
,
村田 紘未
1
,
吉村 智雄
1
,
石川 行良
1
1大阪府済生会野江病院産科婦人科
pp.507-511
発行日 2014年5月10日
Published Date 2014/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103787
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要約
広汎性卵巣浮腫は腫瘍性病変を伴わずに卵巣間質に浮腫変化をきたす卵巣の充実性腫大である.若年婦人に多いことから,術前に充実性卵巣腫瘍との鑑別を念頭に置き,不要な付属器切除を避ける必要がある.症例は33歳未妊,月経は不順.右下腹痛を主訴に他院を受診,急速に増大する右卵巣充実性腫瘤を認め,当科紹介となった.初診時右卵巣は71×98 mmに腫大し,超音波・MRI画像から広汎性卵巣浮腫を疑った.開腹術を行ったところ,右卵巣は婦人手拳大,白色調で720度捻転していた.卵巣・卵管の血流は保たれていたため,捻転解除および卵巣部分切除術を施行した.組織像では間質の著明な浮腫と圧排された正常皮質および拡張した卵胞を認め,広汎性卵巣浮腫と診断した.術前後の画像所見,術後の内分泌検査により多囊胞性卵巣症候群(PCOS)と考えられ,PCOSにより腫大した卵巣が茎捻転を起こした結果,卵巣浮腫を生じたものと思われた.挙児希望はなく,Kaufmann療法を行い,1年後右卵巣の軽度腫大は残るものの広汎性卵巣浮腫の再発は認めなかった.
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