--------------------
編集後記
神崎 秀陽
pp.910
発行日 2012年9月10日
Published Date 2012/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103162
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
アンチエイジングという言葉をよく聞くようになりました.10年程前に研究会として発足してその数年後には学会となり,今や7,000人の会員を擁する「日本抗加齢医学会」のホームページを見ると,今年の横浜での学術集会参加者は4,000人を超えたとのことです.加齢は生物にとって不可避かつ重要な現象で,壮年期まではエイジングという言葉は加齢(成長)のイメージで,以後は老化(衰弱)と年齢によっても受け止め方は変わってきますので,個人的には,アンチエイジングを抗加齢と訳するのには多少違和感があります.この学会で取り上げられているトピックスからは,抗加齢より抗老化のほうが適切な気もしますが,老化という言葉をあえて避けたのでしょう.
PubMedでanti-aging のキーワード文献検索をすると,1948年のビタミンに関する論文が最も古いもので,その後,1970年代頃から抗酸化物質とアンチエイジングというテーマでの研究論文が多数出てきています.そして現在,長寿遺伝子あるいは抗老化遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子やその活性化機構が注目されています.欧米ではエイジングという言葉にはネガティブなニュアンスが強いのですが,わが国でも最近は男女を問わず,外見上の老化を遅らせてより若々しく見せたいと願う人が多いためか,「健康を保って長寿をめざす」という本来のアンチエイジングの医学的目的とはやや異なった,美容領域の話題が目につきます.過大あるいは虚偽ではないかと思われる,アンチエイジングを謳った化粧品,食品,サプリメントなどが氾濫している現状は,日本人の伝統的な思想や美学には相容れないと感じています.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.