今月の臨床 常位胎盤早期剥離─ワンランク上の診断と治療
治療におけるポイントと課題
2.常位胎盤早期剝離(早剝)のDIC対策と治療
加藤 誠
1
,
伊東 宏晃
1
,
金山 尚裕
1
1浜松医科大学産婦人科
pp.1346-1351
発行日 2011年11月10日
Published Date 2011/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102833
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日本産科婦人科学会産婦人科用語集によると,常位胎盤早期剝離(以下,早剝)は,「正常位置,すなわち子宮体部に付着した胎盤が,妊娠中または分娩経過中の胎盤娩出以前に,子宮壁より剝離するもの」と定義されている1).早剝の危険因子は,妊娠高血圧症候群,早剝既往,切迫早産(前期破水,絨毛膜羊膜炎),外傷(交通事故など),喫煙,麻薬などがある.妊娠後半期に切迫早産様症状(性器出血,子宮収縮,下腹部痛と同時に異常胎児心拍パターンを認めた時は,早剝を疑い,超音波検査,血液検査(血小板,アンチトロンビン活性,FDPあるいはD-dimer,フィブリノゲン,AST,LDHなど)を行う.早剝は,合併症として播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome : 以下DIC)を引き起こしやすく,産科DICの原因の約50~60%を占めるとされている.産科DICによる大量出血は出血性ショックのハイリスクであり,その適切な取り扱いは母体の生命予後を左右するといっても過言ではない.産科DICは,急激に進行するという特徴を持ち,不可逆的になる前に早期に診断し,早期に適切な治療すなわち迅速なDICの評価とその補正を行い全身状態の改善を図ることが重要である.
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