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周産期合併症の中で常位胎盤早期剥離(早剥)はしばしば母体死亡の原因となる.1991~1992年のわが国での母体死亡230例のうち,原因を調査できた197例の検討で13例(6.6%)が早剥症例であり,DICまたは出血性ショックを合併していた.また,前置胎盤による死亡は7例(4例は癒着胎盤合併)であった1).つまり早剥による母体死亡は前置胎盤によるものよりも頻度が高い.早剥が重症となる原因の1つはDICであり,早剥ではDICを合併しやすく,胎児生存例では約10%,子宮内胎児死亡を伴う場合は約40%に発症すると言われている2).
早剥に合併するDICは腎不全などの臓器不全を引き起こし,その治療には大量輸血を必要とすることもある.さらには多量出血のために子宮全摘を必要とすることにもなりかねない.分娩が無事終了した後も溢血したCouvelaire子宮は収縮不良により弛緩出血を引き起こす.このように早剥による多量出血は母体救急疾患と考えるべきである.現に東京都では母体救命搬送システムで,平成21年3月25日~平成23年1月31日の間に発生した107件(一般通報31件,転院搬送76件)の母体救命症例のうち最も多かったのは出血性ショックであり,次に多かったのが産科DICであった(図1).この搬送システムの適応症例は表1に示す通りで,重症の早剥は産科救急疾患とすべきである.しかし,後の調査で母体救命搬送システムにのらない重症早剥症例が意外と多かったことが分かっている.これは早剥が産科特有の疾患であるため産科の中で対応されることが多く,またその重症度のリスク分析が十分でないことが原因と考えられる.よって早剥症例においては,その重症度を的確に判定し治療対応することが重要であると思われる.
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