今月の臨床 多胎妊娠―母児のリスクとその管理
臍帯・胎盤の異常と診断・管理
長谷川 潤一
1
,
松岡 隆
1
,
市塚 清健
1
,
三村 貴志
1
,
御子柴 尚郎
1
,
仲村 将光
1
,
大槻 克文
1
,
関沢 明彦
1
,
岡井 崇
1
1昭和大学医学部産婦人科学教室
pp.229-231
発行日 2009年3月10日
Published Date 2009/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101976
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はじめに
多胎妊娠においては子宮腔内に複数の胎盤が形成されることから,その構造異常をきたしやすい.多胎妊娠の娩出後の胎盤では,円形でない胎盤や臍帯異常を伴ったものがしばしば認められる.胎盤の発生は,胎芽の近くにできる臍帯原基である付着茎の周囲の絨毛膜が子宮壁からの血流によって発達することによる.多胎妊娠においては,それぞれの胎盤の発育が他方に影響を与えることがあり,正常な発達過程を妨げることがある.通常,子宮壁からの血流の豊富な部位へと胎盤は成長をするが(trophotropism theory),限られた子宮内のスペースにほかの胎盤も存在するため,やむなく子宮下節や卵管角など,血流の比較的少ない部位に発育することがある.血流の少ない部位に発育した胎盤では,発育不良や萎縮が起き,胎盤の変形や臍帯異常などの合併を引き起こすと考えられる.これらが,双胎妊娠がハイリスク妊娠とされる所以の1つであることも,臍帯・胎盤異常の観点から重要であると思われる.
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