今月の臨床 母子感染─新しい制御戦略
胎内感染のリスクと対策
8.リステリア症
竹田 善治
1
,
安達 知子
1
,
中林 正雄
1
1総合母子保健センター愛育病院産婦人科
pp.1020-1023
発行日 2011年8月10日
Published Date 2011/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102753
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
2010年12月,母子健康手帳の任意記載事項様式の改正で妊娠中の食中毒予防(リステリア菌食中毒)に関する記載が追記された.あわせてリステリア菌による食中毒の予防のため,妊婦向けの「これからママになるあなたへ」と題したパンフレットも作成され厚生労働省ホームページに掲載されている(図1)1).
リステリア症はあまり聞き慣れない感染症である.というのもわが国での平均年間発症件数は83件で,通常は悪性腫瘍,AIDSなど免疫不全状態でない限り罹患することはまれな疾患のためである.しかし,妊婦は本菌に対する感受性がきわめて高く,欧米ではリステリア症1,510例のうち12%を妊婦が占めていたとする調査がある2).一方でリステリア菌が妊婦に感受性が高いと認識している医師・助産師はわずか18%にとどまっていた3).リステリア症の頻度は決して高くはないが,今後は妊婦にとって危険な感染症として周産期に携わる医療者に周知され,妊婦にも肉や魚のパテの摂取に気をつけるなどの予防意識が広まることが望まれる.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.