今月の臨床 周産期の感染症―管理と対策
垂直感染の管理と対策
10.リステリア症
竹田 善治
1
,
中林 正雄
1
1総合母子保健センター愛育病院産婦人科
pp.77-79
発行日 2004年1月10日
Published Date 2004/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100502
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はじめに
リステリア症は,自然界に広く分布するリステリア菌(Listeria monocytogenes)による感染症である.発症頻度は人口10万人あたり0.7人と報告されており,通常は悪性腫瘍,AIDSなど免疫不全となるような状態でもない限り罹患することは稀な疾患である.しかし妊娠中に関してはその特殊な免疫状態のため,本菌に対する感受性が約17倍高くなることが知られている1).
リステリア菌に感染した場合,妊婦の症状は発熱,感冒様症状など比較的軽微で非特異的であるにもかかわらず,児に対しては流早産や子宮内胎児死亡,早期新生児死亡など重篤な合併症を起こす.症状に乏しい感染母体から胎児に経胎盤感染を起こすこと,妊娠中の診断が困難であること,特異免疫能の未熟な胎児への感染後の経過が非常に急速かつ重篤であることなどが予後を不良にしている2).このため本症の迅速な診断・治療が望まれるが,現在のところ母体血や羊水培養などから直接リステリア菌を証明する以外に診断を確定する一般的な検査法はない.頻度は低いがリステリア菌は母児感染の原因菌として念頭に置いておくべきものの1つといえる.
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