今月の臨床 母子感染─新しい制御戦略
胎内感染のリスクと対策
7.パルボウイルスB19
松田 秀雄
1
,
吉田 昌史
2
,
川上 裕一
1
1松田母子クリニック
2防衛医科大学校病院産婦人科
pp.1013-1019
発行日 2011年8月10日
Published Date 2011/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102752
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パルボウイルスとは
ヒトパルボウイルスB19(以下PB19)はParvoviridae familyのErythrovirus genusに属するウイルスである.PB19は1975年にB型肝炎のスクリーニングの途中で発見され,その際,パネルBの19番目のサンプル血液中に存在したことから,B19と名付けられた1).人間に感染しうるErythrovirusはPB19のほかにgenotype 2(A6)とgenotype 3(V9)がきわめてまれな存在として免疫不全個体から発見され近年報告されているが,通常パルボウイルス感染症(リンゴ病)ではPB19を原因ウイルスとしてよい.ヒトのみがPB19の宿主となるので,家畜,ペットなどを通じて感染するものではない.
疾患としてPB19感染症が同定されたのは1981年であり,現在では,正常人においてリンゴ病・関節炎,妊婦において胎児水腫・子宮内胎児死亡,溶血素因のある免疫力の低下した個体において一過性骨髄無形成発作(TAC : transient aplastic crisis)などを引き起こすことが知られている.妊婦で感染が疑われる場合,胎児に意識が向きがちであるが,母体の症状にも注意が必要である.
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