今月の臨床 QOLを考慮した婦人科がん治療
【妊孕能温存】
4.子宮体癌の子宮温存療法の適応と限界
上坊 敏子
1,2
,
今井 愛
2
,
西井 文乃
1
,
海野 信也
2
1社会保険相模野病院婦人科
2北里大学医学部産婦人科
pp.1501-1508
発行日 2009年12月10日
Published Date 2009/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102231
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はじめに
子宮体癌治療ガイドライン1)に明記されているように,子宮体癌に対する治療では子宮摘出が基本である.日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の報告2)でも,子宮体癌症例の95.7%が子宮摘出を含む手術療法を受けている.一方,挙児希望のある若年女性に体癌が発生した場合には,子宮摘出に代わる妊孕能温存療法が強く希望される.体癌に対する代表的な妊孕能温存療法は,プロゲスチン療法である.しかし,プロゲスチン療法の適応と投与の実際は確立されていないのが現状で,子宮体癌治療ガイドライン3)でも,若年体癌に対するプロゲスチン療法に関して「内膜に限局していると考えられる高分化型類内膜腺癌で妊孕性温存療法として有用なことがある」とする一方で,「若年体癌のすべてが保存的治療を考慮される内膜限局G1類内膜腺癌ではないことを認識しておく必要があり」,「的確な病理学的,臨床的診断に基づいて慎重にその適応を検討する必要がある」と記載されている.
現実には子宮体癌の増加に伴って若年体癌症例も増加していて,妊孕能温存療法を求められる機会が多くなっている.実際にプロゲスチン療法を開始したものの,効果の判定や治療中止のタイミングに苦慮している産婦人科医も少なくないようである.本稿では,medroxyprogesterone acetate(MPA)を投与した体癌自験例43例の成績を報告するとともに文献的考察を加えて,子宮体癌に対する子宮温存療法の適応と限界を考察する.
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