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はじめに
近年,若年者の子宮頸癌患者の増加に加え,晩婚化・高齢妊娠などの社会的背景が重なり,妊孕能温存治療が望まれる例が増加する傾向にある.2007年版「子宮頸癌治療ガイドライン」1)や米国National Cancer Institute(NCI)2)のガイドラインにあるように,臨床進行期Ia1期で,脈管侵襲などのリスク因子の少ない微小浸潤扁平上皮癌に対する術式としては,子宮頸部円錐切除術を行うことについては広くコンセンサスが得られている.しかしながら,それ以上の進行病変に対しては原則として広汎子宮全摘出術が推奨されており,手術により妊孕能を温存することが難しくなる.また,近年増加傾向にある子宮頸部腺癌に関しては,妊孕能温存の対象となるのは,妊孕能温存を希望するIa期症例のみで,やはり根治的な子宮全摘出術が標準治療とされている1).
このような状況のなかで,広汎性子宮頸部摘出術(radical trachelectomy)は,本来ならば根治手術の対象となる,Ia2期からIb1期の浸潤子宮頸癌症例に対する妊孕能温存術式として1987年にフランスの故Dargent 3)によって広く紹介された術式である.Schautaの腟式子宮頸部摘出術を基本とするこの術式は,やがて腹式でのアプローチでも行われるようになり,現在では,日本を含めいくつかの施設で取り入れ始められている3~14).今回,この広汎性子宮頸部摘出術に関して自験例の検討も含め,その適応を中心に概説する.なお,radical trachelectomyの邦訳に関しては,安藤ら6)が本邦で最初に「広汎性子宮頸部摘出術」として紹介したことから,ここでもそれに倣い記述した.
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