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はじめに
子宮体癌の治療戦略は欧米と本邦において大きな違いがある.本邦では術前に可能な限り詳細に臨床進行期を決定し,それにより子宮の摘出方法(単純,準広汎,広汎子宮全摘術など)の個別化をはかるとともに,後腹膜リンパ節郭清を積極的に行う.そのため術後の補助療法の対象はリンパ節転移症例などに限られたり,放射線療法よりも化学療法を選択する傾向にある.また腟壁を十分に切除されるので,欧米ではしばしば行われる腔内照射を施行されることは少ない.図1,2には2005年に東京で開催された子宮体癌ガイドライン・パネルディスカッションでの参加者の術後治療についてのアンケート調査の結果を示しているが,中・高リスク群ともこのことをよく示しており興味深い.
一方,欧米では初回治療は単純子宮全摘術および両側付属器摘出術を行い,その摘出標本の病理組織学的な検討から正確に再発リスクを評価し,低リスクを群を除いて,術後の放射線療法が施行されてきた.リンパ節郭清に関しては生検にとどめたり,省略することもある.また,腟壁の再発を防止するために腔内照射がすべてのリスク群で盛んに行われてきた.従来欧米で行われてきた術後補助療法のrandomized controlled trial(RCT)は放射線治療のあり,なしで行われてきたこともこのことをよく示している.しかし最近,本邦でも欧米でも術後療法のRCTは化学療法と放射線療法の比較が行われるようになり,ようやく化学療法も術後補助療法の一員として位置づけされつつある.
本文では再発リスク別(一部手術進行期を加味して)に術後療法のRCTの成績を紹介するとともに,それをもとに,本邦での臨床現場での現況も加味し放射線療法か化学療法か私見を述べてみたい.
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