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1 はじめに
卵巣癌の標準治療は,初回開腹術(primary debulking surgery : PDS)にて卵巣癌であることの確定診断,臨床進行期の決定,病理組織診断,可及的最大限の腫瘍減量術を行い,術後に化学療法を行う手術先行治療である.しかし,卵巣癌の症例の約半数が臨床進行期III期以上であり,PDSでのoptimal surgery(残存腫瘍径10 mm未満)の達成率は40%1, 2)にすぎないのも現実である.そのため,近年ではPDSを行わずに数コースの術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy : NAC)で腫瘍の縮小や全身状態(performance status : PS)の改善をはかった後に,腫瘍摘出術(interval debulking surgery : IDS)を行い,optimal surgeryを目指す化学療法先行治療も注目されており,標準治療とのランダム化試験3)が欧州と日本で進行中である.一方,卵巣癌の臨床進行期III期以上の症例では,初回治療が奏効し臨床的寛解に至っても,その半数以上に再発を認める4)ために,QOLの改善や生存期間の延長を目的として,二次的な腫瘍摘出術を行うこともある.
2007年に改訂された卵巣がん治療ガイドライン5)の上皮性卵巣腫瘍の手術療法に関する分類では,interval debulking(cytoreductive)surgery(IDS, ICS : IDS),secondary debulking(cytoreductive)surgery(SDS, SCS : SDS),second look operation(SLOあるいはSLO/SDS)のいずれもが初回化学療法中,あるいは初回化学療法後に行われる二次的な腫瘍摘出術に該当すると思われる(表1).しかし,卵巣癌は浸潤形式が主として腹膜播種であり,症例によりさまざまな腫瘍の分布をとるため,二次的な腫瘍摘出術を行った場合でも腹腔内所見によっては開腹術の目的を果たせないことがある.
本稿では,二次的な腫瘍摘出術としてIDSとSDSについて,文献的レビューとともに臨床的な意義を考察する.
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