今月の臨床 思春期外来—診療上の留意点
思春期の異常とその対応
10.卵巣腫瘍
西田 敬
1
,
嘉村 敏治
1
1久留米大学医学部産婦人科
pp.1126-1129
発行日 2000年9月10日
Published Date 2000/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904139
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はじめに
思春期(puberty)とは幼少年期を経て成人としての生殖能力を獲得するまでの,主として身体的な発育の時期である.発育過程の評価法としては,1962年にTannerが提唱した分類,すなわち身体の発達状態を乳房や恥毛の発育程度によりstage 1からstage 5までに分けた5段階分類が知られている1).また,身体的な発育に知的,社会的な成長をも加味した青少年期(adolescence)とは少しニュアンスが異なる.
思春期以前の卵巣腫瘍の発生は稀である.卵胞の発育からも判るように,卵巣を構成する細胞を増殖させる因子としては性腺刺激ホルモンの作用が知られているが,卵巣の細胞を励起させ,そして腫瘍化の方向へと導く引き金の正体は依然として不明である.しかし,好発年齢からみて性の成熟や老化など加齢による卵巣の変化は腫瘍発生の大きな要因の一つと考えられる.Weissら2)は年齢の推移による各卵巣腫瘍の発生頻度を検討し,大部分の腫瘍の発生は思春期以前にはほとんどゼロに近く,それ以降から閉経期までは直線的な増加を示し,そして閉経後にはプラトーに達することを指摘している(図1).この現象の理由は不明であるが,Weiss3)は後に,上皮性卵巣癌の発生増加がみられる時期が,排卵や卵胞閉鎖により,卵巣から卵細胞の喪失が進行する時期に一致していることに着目している.
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