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はじめに
進行卵巣癌の初回手術については,Griffiths1)による初回手術後残存腫瘍径と生存期間に関するretrospective studyにより,残存腫瘍径が小さいほど患者の予後が良好であると理解されている.その結果,進行卵巣癌に対する初回治療においては,“maximal debulking(surgical effort)”を行い,術後の残存腫瘍径を小さくすることが最も重要とされている.“Maximal debulking”は,術式に具体的な規定のない非科学的用語であり,初回術式は各施設,術者,症例により異なっているのが現状である.注意すべきことは,術後残存腫瘍径が術式(手術摘出範囲)のみに依存すると誤解されがちな点である.もし手術あるいは残存腫瘍径が独立予後因子であれば,開腹時に腫瘍径がもともとoptimal(<1 cm)の患者の予後は,開腹時suboptimalで術後optimalになった患者の予後と同等になるはずである.実際には後者のほうが予後不良である.Hoskinsら2)によるGOG 52臨床試験の結果から,後者のほうが有意に予後不良であることが証明されている.解析の結果,残存腫瘍径,初回手術が独立予後因子ではなく,tumor biologyを含めた手術以外の因子(分化度,年齢,残存腫瘍の数など)が有用であることが指摘された.さらに,GOG 97の研究結果から,optimal(GOG 97ではoptimal<2 cmと定義されている)にならない場合,maximal debulking(aggressive surgical cytoreduction)は予後改善効果をもたらさないことが証明された3).しかしながら,進行卵巣癌に対しては,初回治療としてoptimal/suboptimalを考慮することなく,aggressive surgery(maximal surgical efforts)を行うべきと理解されているようであり,GOG 52,97の結果は今日の臨床に反映されていない.
現時点での進行卵巣癌における初回手術の意義についてまとめると,optimal(術後残存腫瘍径<1 cm)になる場合は,maximal surgical effort(maximal debulking)を行うことは妥当であろう.一方,suboptimal(術後残存腫瘍径<1 cm)にならざるを得ない症例では,初回治療としてmaximal debulking(aggressive surgery)は推奨されない.T3C症例の少なくとも1/3以上は,いかなる術式をもってしても,optimalを達成することは困難である.このような症例を対象に1980年代後半から,初回治療として,生検程度の手術(一側付切のみなど少なくともmaximal debulkingといえない術式)後,あるいは初回手術を行うことなく,化学療法(化療)を(3~6サイクル)行い,その後にmaximal debulkingを行う治療法が世界中の施設から単発的に報告されてきた4).治療目的の手術の前に化療を行うという観点から,neoadjuvant chemotherapy(NAC)と呼ばれる.NAC後の第2回目の手術を含め,進行卵巣癌における第2回目の手術は次のように分類される.
1)Interval debulking surgery
2)Cytoreducitve surgery at second―look laparotmy(SLL)
3)Cytoreductive surgery for recurrence after primary treatment strategy
4)Cytoreductive surgery for progressive disease during the primary treatment strategy
5)Maximal debulking(delayed primary debulking)after completing primary chemotherapy(neoadjuvant chemotherapy : NAC)
6)Secondary comprehensive surgery after incomplete surgery for apparent early stage disease
以下,各手術に関して概説する.
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