今月の臨床 胎盤と臍帯の臨床
胎盤
4.常位胎盤早期剥離
杉村 基
1
1浜松医科大学周産母子センター
pp.1348-1353
発行日 2007年11月10日
Published Date 2007/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101599
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はじめに
常位胎盤早期剥離は,正常位置である子宮体部に付着している胎盤が妊娠中もしくは分娩経過中胎児娩出以前に子宮壁より剥離するものをいう.興味深いことに,胎盤早期剥離既往症例が再度胎盤早期剥離を起こす相対危険度は10~25といわれている.
胎盤早期剥離の原因は不明であるとともに,そのリスク要因からも複数の機序の存在が示唆される.リスク要因としては高齢妊娠,多産,妊娠高血圧症候群,前期破水,多胎妊娠,羊水過多,喫煙,血栓傾向,胎盤早期剥離の既往,子宮筋腫合併妊娠が挙げられる1).以前は妊娠高血圧症候群に伴う胎盤早期剥離が多かったが,最近では絨毛膜羊膜炎に引き続き,切迫早産から胎盤早期剥離,もしくは胎盤早期剥離から切迫早産といった臨床型をとるものもみられる.
病理学的には胎盤剥離は脱落膜基底層にある小動脈の破綻による出血の結果,脱落膜部への血腫が形成される.交通事故外傷といった直接的なものとともに,無フィブリノゲン血漿患者では流産とともに胎盤早期剥離が高頻度に認められることから,接着タンパク因子の欠乏も発症原因の1つとなっていると考えられる.障害の程度により胎盤機能障害から胎児機能不全,DIC,産科ショックといった2次的病態へ進展する. 特に常位胎盤早期剥離と診断した時点で,経腟分娩とするのか直ちに帝王切開とするのかは2次的病態との関連で臨床上重要な点である.また,管理治療の方針決定にその病態の理解は必須である.本稿では病態を改めて述べ,具体的治療の選択について触れる.
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