今月の臨床 ここまできた分子標的治療
分子標的治療のターゲット
3.血管新生
渋谷 正史
1
1東京医科歯科大学分子腫瘍医学
pp.1234-1239
発行日 2007年10月10日
Published Date 2007/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101580
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はじめに
癌を中心とする多くの疾患において,病的血管新生が悪性化に重要な役割を果たすことが明らかになってきた.1970年代,米国のFolkman博士は固形癌が血管に強く依存して増殖することを示し,「癌の血管新生阻害療法」を提唱した.血管新生には種々の因子が関与するが,そのなかでもVEGF(vascular endothelial growth factor : 血管内皮増殖因子)とその受容体は中心的役割を果たす1, 2)(図1).これらの事実を背景に,病的血管に対する多くの分子標的治療が試みられ,2003年,ついに抗VEGF中和抗体(Avastin)が直腸・大腸癌患者の生存期間を著しく延長させることが明らかにされた3).2007年現在,抗VEGF中和抗体は直腸・大腸癌患者と肺腺癌患者に,低分子チロシンキナーゼ阻害剤は腎癌患者に,薬剤として承認されている.一方,VEGF─C/D─VEGFR3はリンパ管新生を制御しており,この系に対する阻害剤も癌転移抑制剤として期待されている4).本稿では,VEGFとVEGF受容体系の概略を述べたあと,血管の分子標的療法の現状と将来を考察してみたい.
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