連載 Estrogen Series・73
子宮摘出術後女性におけるエストロゲンと乳癌の発生
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.752-753
発行日 2007年5月10日
Published Date 2007/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101395
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更年期後女性にエストロゲン単剤を使用するとき,子宮内膜の増殖症および癌の発生を予防するために黄体ホルモンを併用することはきわめて日常的に行われている.しかし更年期後エストロゲン補充療法に際して,すでに子宮摘出をした女性に対してはエストロゲンのみの単剤を使用すればよい.過去の文献をみるとエストロゲン+プロゲスチンの併用は乳癌の増加を伴うとするものが多い.しかしエストロゲン単剤の場合には乳癌発生との関係は一定していない.ここにご紹介する論文の研究者(WHI Investigators)らはエストロゲンの単剤使用と乳がん発生との関連をみるために子宮摘出を過去に行った女性のみ10,739名を対象に,その乳癌発生との関連をみた.これは全米40か所の病院を巻き込んだ1993~1998年にいたる期間に行われた試験で,50~79歳の更年期後女性を対象とした.患者はランダムに二分され,抱合型エストロゲン(conjugated equine estrogen : CEE)0.625?mgを投与された群(CEE群)と外見上は見分けのつかないプラセボ群とに分けた.追跡期間は7.1年+/-1.6年であった.
浸潤性乳癌の発生を両群でみると,そのhazard rateは0.80(信頼限界0.62~1.04,p=0.09)であった.年間発生率はCEE群が総数104例で0.28%,プラセボ群では133例で0.34%であった.Ductal carcinomaの発生はプラセボ群に比較してECC群でより低下していた.しかし,腫瘍タイプ別の発生率には有意差がなかった(p=0.54).
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